上川大樹 冴えた返し技 残り1秒で一本 100キロ超級 [柔道]
手数を繰り出す鈴木に対し、上川の体はそよぎもしない。器の底深さを見せたのは、規定の5分が尽きかけたころ。「狙っていた。足技が来たら返そうと」。
決着に出た鈴木の大外刈りを仁王立ちで受け止め、返し技の支え釣り込み足できれいに投げ捨てた。
残りは1秒。正確なひと太刀でベテランを切り下げた21歳に、男子代表の篠原監督は「ちょっとは賢くなったじゃないか」。称賛とも皮肉ともつかぬ言葉でねぎらう。昨年の世界選手権(東京)の無差別級金は腕力と勢いで手に入れた。今回は、勝負の機微を察した“大人の柔道”の産物といえる。
国内での優勝は初めて。若いエース候補は、人材難の最重量級に一点の彩りを添える。
ただし、このまま日本男子の看板を背負える器かどうか。脂ぎった欲に薄く「世界王者? そんな自覚はありません」「1番手でも2番手でも、世界選手権に出られればいい」。言葉は上滑りし、どこか幼さが残る。
一方で「井上康生さん(シドニー五輪金メダリスト)が理想。柔道界を背負うなんて、格好いいじゃないですか」と使命感をにおわすセリフも。虚か実かはともかく、上川の行く末が日本男子の浮沈を握るのは確か。29日の全日本選手権で上川の示す回答を待ちたい。
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